音の変化

  • 日常的な話し言葉では, 発話の中で特定の音が弱くなったり, 脱落したり, 前後の音と似た音になったりと, さまざまな音の変化が見られます。Ich habe es → Ich hab’s のようにもっぱらくだけた口語で起こる現象のほか, 語末の -el, -em, -en における e[ə] の脱落のように, すでに一般化してスタンダードとなっているものもあります。
  • 母音 e[ə] は, 脱落してなくなっても, 残った他の音に通常何らかの変化を引き起こします。弱音節部の発音にかける時間を調節し, 強弱のリズムを作り出す上でも重要な音です。
  • 日常的な会話では, このような音の変化を伴う方が自然です。多くは通常の発話速度で話せば自然に起こる現象で, 特に意識して発音する必要はありません。自然なスピードで話せるよう, 文()単位の発音練習をしましょう。
発音してみよう

∗ 語末の en  e[ə] が省略される。

その新車をどう思いますか。

 

∗ が落ち, 語末の が直前の k[k] の影響で [ŋ̩]となる。

ビールは好きですか?

∗ ein の が直後の音 p[p] の影響で [m]となる。

私たちはここにチューリップをいくつか植えます。

∗ 似た音の連続  (baldの d[t]と直後の z[t͜s]) で,  後ろの音 [t͜s] のみ現れる。

彼女はまもなく戻ってくるだろう。

∗ 似た音の連続 (-st の t[t]du の d[d])で, 後ろの音 [d]のみ現れる。[d]は直前の無声音 s[s]の影響で無声化する。

ドイツから来たの?

∗ läuftの t[t]で舌先を上の歯茎から離さず, すぐに [ʃ] の調音に移る ([t̚])

彼女は走るのが速い。

∗ 語尾の の脱落により, 語末の が無声音 [p]になる。書き言葉では hab’のように表記される。口語的。

お腹が空いた。

∗ es の e[ɛ] の脱落によって, 連続する子音 [t] と [s] が融合して[t͜s]となる。口語的。

元気?

チャレンジ!

音変化によって変わる強弱のリズムにも注意して発音しましょう。

∗ e が落ち, 語末の n が直前の k[k] の影響で [ŋ̩] となる。

ここは駐車してよい。

∗ en の が落ち, 語末の が直前の b[b] の影響で [m̩]となる。また es の e[ɛ] が落ち, 似た音の連続 (es の s[s]と sch[ʃ])で, 後ろの音 [ʃ] のみ現れる。

私たちはもうそれをやってしまった。

∗ ge- の g[ɡ] が直前の無声音 g[k] の影響で無声化する。

子どもたちはもう昼食をとった。

∗ das の d[d] が直前の無声音 t[t] の影響で無声化する。

その車は誰のですか?

∗ sind の d[t]で舌先を上の歯茎から離さず, すぐに[ɡ̥] ([t]の影響で無声化) の調音に移る([t̚])

それらの木は大きい。

∗ gebrauchte (語尾 は脱落)の t[t]で舌先を離さず, すぐに [f]の調音に移る。

彼はその中古自転車を買った。

∗ heiße の語尾 の脱落。書き言葉では heiß’ のように表記される。口語的。

私はトーマスといいます。

∗ heute の語尾 の脱落。書き言葉では heut’ のように表記される。口語的。

今日時間ある?